子宮頸がんとは
子宮頸がんとは、子宮体がんとともに、子宮がんに分類されるがんです。通常、「子宮がん」と呼ぶ時には子宮頸がんと子宮体がんの両方を指すことになります。
子宮頸がんは、子宮の出入り口である「子宮頚部」にできます。20~30代で女性がかかるがんとしてはもっとも多く見られ、近年は特に30~40代での発病が目立ちます。
原因は性交渉によるヒトパピローマウイルスへの感染
他のがんと異なり、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスへの感染を原因として発病します。ヒトパピローマウイルスは自然界にごく当たり前に存在します。ヒトの身体であれば口腔粘膜、生殖器の皮膚・粘膜などに見られ、ほとんどの感染は性交渉によって成立します。
ワクチンによる予防が可能
これまでに1度でも性交渉の経験がある人は、誰でもヒトパピローマウイルスに感染している可能性、そして子宮頸がんを発病する可能性を持ちます。
このように聞くとこわいイメージを抱きがちですが、子宮頸がんはウイルスを原因するため、ワクチンによる予防が可能です。これは、他のがんには見られない予防法となります。
子宮頸がんワクチンの対象となる方
10歳以上の女性であれば接種可能ですが、日本小児科学会・日本産婦人科学会では、11~14歳での接種を強く推奨しています。またこの時期に接種できなかった女性には、15~45歳での接種を推奨しています。
子宮頸がんワクチンの効果
子宮頸がんワクチンには、ヒトパピローマウイルスへの感染と、子宮頸がんの発病を予防する効果があります。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルスの持続的な感染によって発病によって起こります。ワクチンを接種しヒトパピローマウイルスの抗体が子宮頚部に滲出することで、ヒトパピローマウイルスの持続的な感染を予防します。
ただし、子宮頸がんワクチンを接種したとしても、100%子宮頸がんにならないというわけではありません。20歳からは、定期的に子宮がん検診を受けることも大切になります。
子宮頸がんワクチンの副作用とリスク
子宮頸がんワクチンについては、正しい情報だけでなく誤った情報・誤解を招く情報がネット上などに見られます。気になる副作用やリスクについて、改めてご説明します。
主な副作用について
注射者部位の痛み、赤み、腫れといった副作用が比較的よく見られます。ただし、これらの副作用は他のワクチンにおいても起こり得るものであり、子宮頸がんワクチン特有の副作用ではありません。
- 注射部位の痛み・赤み・腫れ(10%以上)
- 注射部位のかゆみ・内出血、不快感、頭痛、発熱など(10%未満)
- 手足の痛み、腹痛、下痢(1%未満)
- 疲労感、筋肉痛・関節痛、失神(頻度不明)
重い副作用について
他のワクチンと同様、重い副作用も報告されています。しかしいずれも、極めて頻度の低い副作用となります。
アナフィラキシー(約96万回に1回)
呼吸困難、じんましんなどが見られる重いアレルギーです。
ギラン・バレー症候群(約430万回に1回)
手足の力が入りにくくなるといった症状を伴う、末梢神経疾患です。
急性散在性脳脊髄炎(約430万回に1回)
頭痛や嘔吐、意識低下などの症状を伴う脳神経・脊髄の疾患です。
複合性局所疼痛症候群(約860万回に1回)
外傷に起因して起こる慢性の痛みなどの症状の総称です。
一時期メディアで盛んに取り上げられましたが、極めて稀な副作用であり、また子宮頸がんワクチンとの明確な因果関係については立証されていません。
不妊について
子宮頸がんワクチンと不妊についても、その因果関係は立証されていません。
副作用が起きた時の治療について
子宮頸がんワクチンの接種後、副作用が起きた時には、まずは接種した医療機関に相談しましょう。
また、各都道府県では子宮頸がんワクチン接種後に現れた症状の診療に対応する医療機関が、協力機関として選定されています。京都府の場合、京都府立医科大学附属病院が選定されており、必要に応じて協力を要請するシステムとなっています。
子宮頸がんワクチンの種類
現在、国内では以下の3つのワクチンが使用可能となっています。
副作用については、大きな違いはありません。
価数(※) | 当院での採用 | |
---|---|---|
サーバリックス | 2価(16・18) | なし |
ガーダシル | 4価(6・11・16・18) | なし |
シルガード9 | 9価(6・11・16・18・31・33・45・52・58) | あり |
※価数とは、獲得免疫の数です。価数が多いほど、予防効果は高くなると考えられます。
シルガード9(当院採用)
国内では2021年に発売された子宮頸がんワクチンです。
また2023年には定期接種ワクチンとしての承認も受けています。
日本人は世界的に見ても16型・18型以外の型番で子宮頸がんを発病することが多いため、シルガード9の接種により、他のワクチンのサーバリックスやガーダシル以上の予防効果が得られるものと考えられます。
子宮頸がんの接種率
子宮頸がんワクチンの接種率は、年代によって大きな差があります。
公費助成のあった1994~1999年生まれの年代では、接種率は約70%でした。その後一部のメディアが子宮頚がんワクチンの副作用について盛んに取り上げたこと、2013年に厚生労働省がワクチンの積極的接種勧奨の中止を発表したことから、2002年以降に生まれた方の接種率は1%未満にまで下降しました。
しかし2021年には「HPVワクチンの積極的勧奨を差し控えている状態」の終了が厚生労働省より発表され、2020年度には約7%まで回復しています。カナダ、イギリス、オーストラリアでは接種率が約80%となっており、今後、子宮頸がんやワクチンへの理解が深まる中で、国内でも接種率は上昇していくものと推定されます。
子宮頸がんワクチンの費用
子宮頸がんワクチンは、定期接種であれば無料(公費負担)で受けられます。定期接種の対象となるのは、小学6年生~高校1年生の女児・女子生徒です。
お住まいの自治体で定期接種であることをご確認の上、当院でご予約ください。
対象年齢以外の方・接種の機会を逃した方
定期接種の対象となる年齢以外で接種を希望する場合には、基本的に全額自己負担となります。
ただし、厚生労働省が接種推奨を中止した期間が定期接種の年齢に当たり(1997年4月2日~2008年4月1日生まれ)、かつ過去に子宮頸がんワクチンの接種を合計3回受けていない女性については、「キャッチアップ接種」として無料で受けていただけます。
キャッチアップ接種ができるのは、2025年の3月までとなっておりますので、お早めに当院にご相談ください。
よくある質問
子宮頸がんワクチンは、何回接種が必要ですか?
原則3回接種が必要です。シルガード9の一般的なスケジュールは、以下の通りです。
●シルガード9(2回または3回接種)
・初回接種が15歳未満の場合(2回接種)
1回目から5カ月以上をあけて2回目接種
・初回接種が15歳以上の場合(3回接種)
1回目から1カ月以上をあけて2回目接種
2回目から3カ月以上をあけて3回目接種
子宮頸がんワクチンは、身体のどこに打つのでしょうか?
基本的には肩に打ちます。子宮頸がんワクチンはいずれも海外製であり、肩への筋肉注射における効果、副作用のデータのみ存在します。皮下注射した場合であっても同じ効果や副作用が認められるとの確証はないため、原則として肩への筋肉注射となります。
子宮頸がんワクチンの安全性について、少し心配があります。
2017年に開かれた厚生労働省の専門部会では、一部メディアなどで指摘された「多様な症状」と子宮頸がんワクチンの因果関係を立証する報告がなされませんでした。慢性の痛み、運動機能障害といった症状は、ワクチンの成分とは関係のない、機能性身体症状と考えられるとの見解が出されています。
また2016年には、厚生労働省研究班の全国疫学調査の結果が報告されました。それによると、子宮頸がんワクチン接種歴のない人にも、先述の「多様な症状」が一定の割合で見られたとのことです。
こういった経緯もあり、厚生労働省は2021年4月、子宮頸がんワクチンの積極的勧奨を再開することになったのです。
子宮頸がんワクチンを打っても、子宮頸がんになる可能性はあるのでしょうか?
はい、子宮頸がんワクチンを打ったからといって、ヒトパピローマウイルスの持続感染、子宮頸がん発病を100%防げるわけではありません。
しかし感染のリスク、子宮がんの発病リスクを下げられることが分かっているのも事実です。少しでもリスクを少なくするためには、子宮頸がんワクチンの接種は大変有効な対策と考えます。